BGC駐在日記

フィリピンのフォート・ボニファシオ(BGC)での生活の記録です。

Unli Rice

フィリピンオフィスへの出社 2 日目。ようやくメールの読み書きや業務の確認環境が整ってきた。まだまだ色々と分からないことはあるが、追々頑張っていこう。

自分が少しは英語を話せるというのもあって、言語的な心配はあまりしていなかったのだが、ちょっと予想よりも悪いのが、フィリピン人スタッフの英語スキルだ。フィリピン人は基本的に誰でも英語を話せると思っていたし、それは概ね正しいのだが、その習熟度合は人によって大きな開きがあり、特に話す方に関しては、そこまで信用することができない。オフィスのスタッフにしても、複雑な話になるとフィリピン語(タガログ語)を使うことが多い。市井の人々はもっと平均レベルが低いと感じる。これはつまり、普段どれだけ英語を話す必要性があるかどうかに関係しているように思う。マニラ周辺において、フィリピン人同士が英語で話す必然性はないのだ。また、BGC は様々な国から人が集まっているとはいえ、基本的には観光地ではない。そのためか、例えばレストランのスタッフなどは、アジア人の私に向かって、まずはフィリピン語で話しかけてくる。こちらが英語で話しても、中々通じない。私の発音の問題かもしれないが、私の場合、文法的に間違っていることは頻繁でも、各単語がネイティブスピーカーに伝わらないことはほとんどないので、それだけが原因ではないと思う。多分、「これから英語を話しますよ」という風に、相手に心の準備させないとダメなのだろう。私も、「これからこの人は英語を話すぞ」と身構えていないと、とっさに英語を聴く耳にならない。

毎週金曜日の昼食は、費用が会社持ち(上限は 200 ペソ)で好きな配達弁当を注文できるらしい。メニューを見せてもらって、魚の開きとライス、野菜を煮込んだものをお願いする。全体で 150 ペソ程度だったと思う。フィリピンでこの手の弁当を頼むと、日本のコンビニが提供するものよりもずっと「なよなよした」スプーンとフォークが付いてくる。ペラペラで、いかにも頼りない。このフォークでどうやって皮の硬い魚を食べろというのか…。自分の箸を持ち歩けば済む話なのだが、郷に入っては郷に従え、このスタイルに慣れたい気もする。結局、いつもの 2 倍くらいの時間をかけて昼食をとる。

午後からは、再び上司Aさんの部屋探しについていく。昨日ついていって感じたのだが、H社長とAさんだけで行くよりは、通訳的なことができる(というかAさんが遠慮なく話せる)私が一緒に行く方が、色々スムースになる気がする。Aさんがどれだけ曖昧に受け流しても、ブローカーとかオーナーは容赦なくペラペラと英語で喋るし、Aさんもあまり自分の希望や要求を言わない(NHK の受信だけは譲れないようだが)。H社長も、決めるのはAさんだからというスタンスで(そりゃそうだ)、基本的には静観している。まぁ、これは余計なお世話というものかもしれないが。私は私の都合で、色々な部屋を見たい気持ちがある。

この日は、車を使って 5 つの部屋を見に行った。昨日に比べれば、どの部屋も相対的に魅力的で、内容の割には価格もこなれていた。昨日と違うブローカー(の会社のスタッフ)だったのだが、個人事業主ではないからか、昨日より客に対して控えめだ。グイグイ来ない。そして、やはり英語は聞き取りやすい。日常的に英語を話す必要性があると(コンドミニアムを探す人のうち、結構な割合がフィリピン人ではないと思われる)、そうなるのだろう。あるいは、そういう風に話せる人しか、このような職業に就くことは難しいのかもしれない。紹介された部屋はそれぞれ個性があって、中々面白いと思ったが、一つ、手狭ながら家電の趣味・性能が良く、独り暮らしには良さそうな部屋があった。Aさんも同じように感じたらしい。私としても、いくつかの小奇麗な部屋を見たことで、今後の自分の部屋探しに多少の希望を見出せた。

20 時前には退社して、巨大ショッピングモールである「Market! Market!」に出かけてみる。日本から色々な日用品を持ってきたので、すぐに何か入用になるということにないのだが、現地でどういうものが手に入るのか、どのくらいの価格なのかを調べることは早々に済ませておきたい。

オフィスの入っているビルもそうだが、BGC の多くの建物では、入り口にガードマンが居て、かつ、空港にあるような金属探知機らしきゲートがあり、荷物の中も軽く検査される。日本では大型遊園地くらいでしか見かけない光景だが、こちらでは日常のようだ。慣れてくると、逆にこういう検査があることが安心感に繋がってくる。そんなゲートを抜けて、目の前に広がるのは、言ってみれば「やや薄暗いイオンモール」。イオンモールよりも雑然としていて、場所によっては秋葉原の電気街っぽい。日本資本のお店もたくさんあって、日本で売っている商品が、翻訳もされずにそのまま売られていたりする。値段は、日本で買うよりも 2-3 割ほど高い印象だ。ここに、両替する場所もあるはずだが、この日は見つけられなかった。まだしばらく、セントレアで法外な(?)レートで両替した 4,000 ペソ(8,400 円)で過ごさなくてはいけない。

シシグ

シシグ、謎の小皿、謎の調味料

夕食は、Market! Market! の地下にあるスーパーマーケットに隣接する、「Mang Inasal」で夕食。安いからか、狭い店内に、およそ金持ちには見えない客がごった返している。シシグを注文したら、「Rice? Unli Rice?(アンリ・ライス)」などと聞かれて、なんじゃ Unli Rice って…と思いながら「Rice」とだけ答えたのだが、115 ペソ(240 円)と言われたので、どうやら Unli Rice が注文されてしまったらしい(Rice の方は 99 ペソだったと思う)。そもそも違いが分かっていないし、面倒だったのでそのまま 115 ペソ支払って、座席に移動する。座席は、前に使った客の片づけが十分には行き届いておらず、お世辞にも清潔とは言えない。ここに妻を連れてくるのは難しそうだ、などと考える。シシグと一緒に、調味料が 3 種類(黒、赤、檸檬色)、それに、親指の先くらいの、ライムに似た小さな柑橘類と唐辛子そのままが小皿にのって運ばれてきた。いきなり食べ方が分からない。皿を置いて去ろうとするウエイターに「この調味料は何に使うのか」と聞いたら、黒いのはこれ(柑橘類と唐辛子の小皿を指す)、赤いのはこれ(シシグのライス部分を指す)と言う。「これは?(檸檬色のの調味料)」と聞くと、少し困った顔をして、「これはフィリピンではよくあるもので…」などと言うので、「お好みで何にでもってこと?」と聞いたら、そうだと答えた。酢なのかな?と勝手に想像したが、結局使わなかった。シシグに添えられたライスは真っ白で、何が「Unli」なのかも分からない。この柑橘類と唐辛子が Unli なのだろうか?

お腹が空いていたので、とにかく食べ始める。やはり米はそんなに美味しいものではないが、ラー油のような色合いの謎の調味料をかければ、なんとなく美味しく食べられる。シシグの味も悪くない。とてもジャンクな感じだ。しかし、柑橘類と唐辛子の食べ方が分からない。そうこうしているうちに、若い店員が炊飯器らしきものを持ってきて、人懐っこい笑顔で何か言う。どうやら「お代わりはどうだ?」と聞いているようだ。「いやいやいらない」と言うと、怪訝な顔をする。柑橘類と唐辛子を指し、「これは Unli だ」と言う。なるほど、それが Unli か。しかしお代わりはいらない。店員は怪訝な顔をして去る。そこでハタと気づく。「Unlimited(アンリミテッド=食べ放題)」か! きっと、Unli を頼んだ人には、この謎の柑橘類と唐辛子が添えられ、店員はそれを目印に、客にお代わりを聞いて回るのだろう。今回は損と言えば損だが、16 ペソ余分に払って、今後のための教訓を得たと思えば安いものだな、と前向きに考えて食事を再開する。が、やはり柑橘類と唐辛子の食べ方は分からない。黒い調味料をかけて、柑橘類と唐辛子を、皮ごと食べるのだろうか。まさかね。逡巡していると、今度はさっきの人懐っこい店員がスープを持ってきた。咄嗟に「これはどう食べるのか?」と聞いたら、笑顔のまま柑橘類をつまみ、スープの上で絞って果汁を垂らした。なるほどね。だが待て唐辛子はやっぱりそのまま食べるのか? 店員はさらに笑って、唐辛子をつまんでスープに落とした。辛みが染み出してアクセントになるのかな。結局全部店員にやらせてしまった。食事を終えて帰り際、さっきの店員に「ありがとう、良い店だね」と言ったら、「また来てください」笑顔で答えた。もう少し綺麗ならいいんだが。

明日は土曜なので、少しゆっくり眠れるな。