BGC駐在日記

フィリピンのフォート・ボニファシオ(BGC)での生活の記録です。

いよいよフィリピンへ

本日は初のフィリピン渡航日。台風の影響で関空が機能不全のため、急遽セントレアからの飛行機を手配した。上司のAさんとセントレアのすぐそばにあるホテルに前日入りしたので、当日の移動は楽なものだった。

チェックインカウンターでスーツケースを預けた後、搭乗まで 1 時間以上時間があるので、こんな時にしか活躍しないゴールドカードを使ってプレミアムラウンジに入る。残念ながらAさんはゴールドカードを持っていないというので別行動となった。ラウンジの中は早朝だというのに結構な人が居たが、席がないという程でもなく、カウンター風味の個人席を確保。驚いたことに、ビールサーバーまである。思ったよりも豪華だな、プレミアムラウンジ。トマトジュースを飲みながら、端末でバックトゥザフューチャーを観る。席ごとに USB コネクタがあるので、端末に充電できるのがありがたい。

保安検査を抜けたところに両替所があったので、2 万円程両替しておこうかと立ち寄ったら、係の人に「(1 ペソが)2.59 円ですが、よろしいですか?」と聞かれて、思わず「2.59 ?!」と大声を出してしまった。現在のレートだと、1 ペソは 2.1 円以下である。日本の空港の両替は高いと聞いていたが、まさか 20 % 以上も手数料がかかるとは思わなかった。仕方ないので 1 万 360 円を 4 千ペソに両替するだけに留めた。ANAマイレージが貯まるというので、マイレージカードを提出。雀の涙ほどだが、多少は心が慰められる(じゃあ両替するなよ、って話か)。

その後、Aさんとゲートで合流。ほどなくしてフィリピン航空の飛行機に搭乗。一列 6 席で、真ん中に通路が一つという、国際線としては小ぶりな飛行機だ。自分の座席(通路側)に着くと、フィリピン人らしい兄ちゃんが座っている。チケットを見直すが、やはりそこは私の席だ。そのように兄ちゃんに告げると、しぶしぶといった態で、一つ隣の席(通路側と窓側の間の窮屈な席)に移動した。フィリピン人の中にはずる賢い人もいる、という話を聞いていたが、いきなり遭遇するとは…。まぁでも兄ちゃんも「あわよくば」くらいの気持ちだったのだと思うし、あまり深く考えないようにしよう。しかし、中々厚顔ではある。離陸後、兄ちゃんは通路を挟んだ反対側の空席に勝手に移動して、ゆったりとした気持ちでフライトを満喫したようだ。ずるいことではあるが、いちいち憤慨していても仕方ないので、「やれやれ」と呟いて受け流すことにする。兄ちゃんとは、ドリンクや機内食の配布の際に小さなやり取りをしたが、まぁそんなに悪いやつでもなさそうだったし。

約 4 時間のフライトの後に、マニラにあるニノイ・アキノ空港に到着。機内であれこれフィリピン人 FA に聞きながら書いた税関の書類は、一瞥もされずに空港職員によってどこかにしまわれた。そんなので大丈夫なのかと心配にもなるが、そもそも税関の書類は自己申告なので、悪意による持ち込みは防げないのだろう。税関を抜けると、Aさんが空港のタクシー受付でタクシーを手配してくれた。流石に慣れたものである。Aさんは英語がほとんど話せないので、なんとなくのやり取りで話が進むわけだが、何とかなっているようで感心する。世界は曖昧なものだ。

小さな老人が運転するバンに乗り込み、一路 BGC を目指す。ところが、Aさんも経験がないほどの大渋滞で、空いていると 30 分程度の道のりが、1 時間経っても着かず、結局 1 時間半くらいかかったようだ。ただ、私は初めてのフィリピンだったので、車窓から見えるものが色々珍しく、特に退屈はしなかった。フィリピンの渋滞が酷いということも聞いていたので、まぁこんなものだろう、と思っていたのもある。途中、車内が寒くなってきたので、後部座席用のクーラーを調整していいか運転手に聞いたのをきっかけに世間話が始まってしまった。話すのは構わないが、運転手の英語の訛りが強くて、かなり集中して聞かないと何を言っているのかさっぱり分からない。大して重要なことを話しているわけでもないので、聞き取れなかったところは適当に受け流してやり取りをする。曖昧に。

滞在しているコンドミニアム

滞在しているコンドミニアム(別の日に撮影)

ようやく BGC の、私が滞在するコンドミニアムに到着。ここは、Aさんが先月まで滞在していたところでもある。これまでのべ 1 年くらいは滞在しているのではないだろうか。コンシェルジュ兼ガードマンに(ディックという名前だ。男性器の俗称でもあるが、子供のころはいじめられたりするのだろうか…などと考える。)パスポートを渡して本人確認をする。同行していたAさんとは知り合いらしく、親しげに名前を呼ばれたりしていた。Aさんはやはり曖昧に受け流している。

Aさんに連れられて 19 階にあるその部屋に案内された時の第一印象は「薄暗く、綺麗とは言えない」だった。滞在者交代のためのクリーニングはされているようだが、根本的に掃除が行き届いていないのが、端々に見て取れる。仕方ない。それは自分でやることにしよう。こういう事態を予測して雑巾は持ってきてあるし、ホテルではないのだから贅沢を言っても始まらない。

部屋にスーツケースを置いて、オフィスまで徒歩で移動。10 分ちょっとの距離だ。天気は曇っていて、雨がぱらついている。街は薄暗く、車のクラクションは騒がしく、あちこちが高層ビルの工事中で雑然としている。お世辞にも美しいとは言えない。所狭しと建ち並ぶ高層ビル群は壮観だが、雨の中では物寂しい。

オフィスの入っているビルのロビーで、私がビルに入るための ID カードを持ってきてくれる現地社長のHさんを待つ。5 分以上は待たされた気がする。後で分かったことだが、エレベーターの混雑が酷く、ビルの出入りにはかなり時間的な余裕を見ておかないといけないようだ。持ってきてもらった ID カードでロビーの改札を通り、15 階にあるオフィスへ行く。そこには、既に顔見知りとなっているフィリピン人スタッフも何人かいたし、テレビ会議越しに見ていたオフィスだったので、それほど感慨もない。私のデスクに案内され、初対面の何人かとも軽く挨拶をしたあと、H社長とAさんと私とで、Aさんが滞在するコンドミニアム(ホテルの一部がコンドミニアム・エリアになっている)に徒歩で移動。5 分ちょっとくらい。

Aさんが滞在する部屋は、私の部屋に比べたら明るく、綺麗で、中々羨ましい感じ。ただ、Aさんがここに滞在するのは数日の予定で、今後の駐在のための部屋をこれから探すとのことだ。こういう綺麗な部屋も存在するということに、やや安心感を覚えた。近未来都市と呼ばれるくらいの街なら、こうであってほしいものだ。

その後、ホテルに入っているカフェスペースで、3 人で休憩。インテリアがダイナミックで、お洒落だ。いかにも BGC っぽい空間。モヒートを注文したら、ウエイトレスが今は作れないと言うので、材料がないのかと聞いたら、そうだと答えた。何が? ミントか? 仕方ないのでテキーラサンライズを注文。折角なので、(物理的には)初対面のH社長に色々な質問をして、お互いの人柄が分かるようにする。あまり多趣味なタイプではないようだ。BGC は娯楽が少ないようなので、多趣味な方ならそのアクティビティを参考にしたかったのだが。Aさんにしても、今のところ英語が話せないのもあって、BGC での活動範囲が狭く、やはりアクティビティについては参考にならない。そういうのは自力で開拓するしかないようだ。

夕食は、H社長に連れられて、日本居酒屋の「むさし亭」へ。スタッフが日本語で挨拶をしてきたり、日本語の注文を理解したりと、教育が行き届いている模様。メニューも運ばれる料理も完全に日本の居酒屋で、味も良いと思う。慣れない食事(フィリピンの食事は脂っこいらしい)にならないよう、H社長が気を遣ってくれたのだろう。フィリピンまで来て日本の居酒屋に来なくてもいいのでは、とも思うが、フィリピンの料理はこの先飽きるほど食べられるだろうしね。

丸亀製麺

行列ができている丸亀製麺

食事の後は、やはり歩いてコンドミニアムに戻る。全てが徒歩圏内、小さな街だ。まだ 21 時前だったので、近くの High Street という、レストランや服・雑貨屋などが立ち並ぶ一角をぶらぶら散歩し、店を冷やかしたりする。丸亀製麺には行列ができていた(どうやら行列店らしい)。BGC は、フィリピンの都市としては飛び抜けて治安が良く、女性が真夜中に出歩いても身の危険を感じることはまずないようだ。至る所に警備員(警官ではなさそうだが)がいるし、スラムもない(隣接地域にはある)。帰りに、近くの小さな食料品店で Lay's のポテトチップスの小袋を買う。65 ペソ。日本円で 140 円弱。決して安くはない。BGC の生活コストは、日本と同じか、やや高いというのが、事前に集めた情報からの想像だが、早速それを実感した。独身時代のように、無尽蔵に食費を使わないように気をつけなくてはいけない(使っても自分の貯金が減るだけだから、問題はないが…)。

私の感覚ではあまり綺麗とは言えない(汚い、とはちょっと違う)バスルームでシャワーを浴び(フィリピンのコンドミニアムには、まずバスタブはない)、日本から持ってきた小ぶりのブランケットにくるまって眠る。冷えると予想して、部屋のエアコンは切っておく。この部屋には、掛布団に相当するものは、掛けシーツ?を除けば存在しない。フィリピン人は何も掛けずに眠るのが一般的なのだろうか? 謎だ。