BGC駐在日記

フィリピンのフォート・ボニファシオ(BGC)での生活の記録です。

陽気なフィリピン娘たち

f:id:km-in-bgc:20181001234618j:plain

Little Tokyo 入り口の寂れた看板

日曜日だけれど、昨日早く寝たからか 8 時前には起床。ゴキブリとヤモリにびくびくしながら洗濯をする。ちなみに、ゴキブリはともかく、ヤモリは別に嫌いではない。ただ、突然視界の端で何かが動くとびっくりするというだけ。幸い今日はゴキブリを目にすることなく、無事に洗濯が終わった。ふぅ。

今日は BGC の外に出てみることにした。Grab という配車アプリをダウンロードして、マカティの Greenbelt Mall (巨大なショッピングモール)を目的地に設定する。配車を頼むと、紹介された車には他の客も乗っていると表示されたが、別にシェアするのは構わないので予約をすると、数分でコンドミニアムに着くという。慌てて玄関の鍵をかけて外に出るが、こういう時に限って一向にエレベーターが来ない。エレベーターを待っているうちに、タクシーが到着したという表示がされ、3 分以内に現れないとキャンセルになってしまうという。しかし全然エレベーターが来ない。階段を使おうにも、ここは 15 階である。さすがにエレベーターの方が早そうだ。Grab のチャット機能で「エレベーターを待っている。とても混んでいる」とドライバーにメッセージを送る。シェアしている人にも申し訳ない。ようやく着いたエレベーターは案の定混んでいて、しかもその後も各階に停止する。こんなこと今まで一度もなかったのに…。

明らかに 3 分以上が経っていたが、コンドミニアムの車寄せに、目的の車はあった。謝りつつ車に乗って、マカティを目指す。BGC の中で、シェアしていた客を降ろして、後は運転手と 2 人きり。特に会話は無い。怒っているのかもしれない。車は順調にマカティに向かい、5 km 程の道のりを 20 分くらいで到着。131 ペソ(280 円)。安い。車(トヨタの海外限定モデル、ヴィオス)も快適だったし、運転も中々丁寧(フィリピンにしては)。よくよくお礼を言って降車する。

f:id:km-in-bgc:20181001235553j:plain

マカティ高層ビル群の近くの街並み、日本の片田舎のようだ

さて、いざマカティに来たものの、特にこれといった目的は無い(目的は BGC の外に出ることだ)。ひとまず、Little Tokyo という一角があることは知っていたので、Greenbelt Mall から 1 km 以上歩いて、Little Tokyo に向かう。今日はフィリピンに来てから最も日差しが厳しく、暑い日だった。たまらず、途中のセブンイレブンで 500 ml の水を買う。16 ペソ(35 円)。安くて助かる。風景は BGC とは違い、高層ビルばかりではなく、小さな商店もたくさんある。古びたビル、古びた店、時代錯誤なキャバレーのような場所。日本語もちらほら見かける。きっと 70 年代だか 80 年代だか、バブルに浮かれた日本人がやってきて、騒いだりしていたのだろう。夢の跡だ。早晩、国としての立場は逆転するのではないだろうか。私が生きている間かどうかは分からない。

f:id:km-in-bgc:20181001234945j:plain

Little Tokyo 内部

そうこうして Little Tokyo に着く。しかし、着いたかどうかが確信を持てない。Google Map は、ここが Little Tokyo だと言っている。私自身は、横浜や神戸にあるような中華街の、規模を小さくしたような街並みを想像していたのだが、そこにあったのは、時代から取り残された何かだ。細い路地の入口に、鳥居がある。鳥居には Little Tokyo と書いてある。ひと気の無いその路地に入っていくと、フットサルコートくらいの広場に黒塗りのテーブルが並べられ、その周りにお好み焼き屋や居酒屋が数軒立ち並んだ空間があった。真昼間なので営業していない。私一人だ。フィリピン人の店員らしき人が、準備のためなのか出入りしていた。痩せた猫がこちらを警戒している。よくもまぁ、たったこれだけの空間を東京などと呼んだものだ。小京都もびっくりな JARO 案件だ。札幌の時計台だって、これよりは失望感が少ないだろう。同じく、Little Tokyo を訪れていた日本人らしき団体が外縁にいたが、辺りをきょろきょろしている。戸惑いの色を隠せていないように見えた。それはそうだろう。

f:id:km-in-bgc:20181001235738j:plain

たまたま見つけた日曜市

中々興味深いものを見た、と Little Tokyo のことを思いながら Greenbelt Mall に戻る途中、日曜市をやっていたので立ち寄る。普段は駐車場として使っている区間に、所狭しとタープが並べられ、野菜、工芸品、ジャンクフードなどが売られている。結構広い。観光客なのか白人も多い(BGC は、私が想像したよりも白人が少ない)し、子連れも多い。折角なので、鳥を串に刺して焼いたものを 50 ペソ(110 円)で買い、ほおばりながら商品を眺める。こういうところで野菜を買うと、海外に来た気分になれるのかもしれない。

f:id:km-in-bgc:20181001235153j:plain

モヒートとグリーンカレー。もち米は小型のセイロに入ってお握り状だ

昼食は、Greenbelt Mall のタイ料理屋「Mango Tree」でモヒートとグリーンカレー、それにもち米を頼む。昼間っから飲めるのは、海外にいるからこそという感じだ。日本にいると、どうしても車を運転したくなるので、昼間に飲む気にならない。チャージも合わせて 752 ペソ(1,580 円)。ちょっと贅沢をしてしまったか。300 ペソのお釣りが来るように 1,052 ペソの支払いをしたのだが、50 ペソやら 20 ペソやら、やたら細かい紙幣でお釣りが返ってきた。なんだこれはと思ったが、もしかして、チップを置いていきやすいように少額紙幣にしているのだろうか(サービスチャージがあるのに?)。うーん謎だ…と思いつつ、チップを払ったことがないので、50 ペソをテーブルに置いて立ち去る。はたしてこれで良かったのだろうか? 確認のしようもない。後で調べたところ、レストランで 50 ペソというのは、特に失礼な金額ではないようだ。良かった。

f:id:km-in-bgc:20181001235420j:plain

Greenbelt Mall

Greenbelt Mall は、SM Aura と比べてももっとハイソな店舗が多く、例えばエルメスとかプラダとか、そういう感じ。日本で言うデパートに近いもののようだ。勿論、無印とか H&M も入っているので、上から下まで…とうところだろうが、例えば 100 均に相当するような店は無い。全体的に高級だ。私がウインドウショッピングするには適さないなー、という印象。あと、トイレが見つけにくい。もしかしてトイレがないのかと思ったくらいだ。そんなこんなでトイレを探していたら、妙齢のフィリピン人女性 2 人組に道を聞かれた。30 歳以上 45 歳以下…といったところだろうか。全然想像がつかない。身なりは、お洒落でクールな感じだ。「ごめんなさい、英語で…」と言えば「あら、フィリピン人かと思ったわ、ふふふ」と笑う。フィリピン人に見えるというのは、日常の危険が減りそうだからいいな、などと考えていると、続けて「学生?」と聞かれて、「いやいや、42 歳(実際はまだ 41 歳だった)」と答えたら、例のごとく驚いた反応。そんなにか。そのまま、彼女たちが日本を訪れた時の話とか、日本のどこに住んでいるのか、といった話をしながら歩く。「トイレを探しているんだ」と言えば、トイレに案内してくれた。じゃあね、と別れてトイレに行く。

トイレから出てくると、入り口近くにまだ彼女たちがいたが、特に声をかけるでもなく私は反対方向へ。と、後ろから声をかけられた。「(11 月に日本に行くという)彼女が日本語を教えてほしいんだって。時間があるならコーヒーでも飲みながらどう?」と言ってきた。まぁ 1 時間くらいなら…と答えて、サンマルクカフェへと行く。一方の彼女は東京に滞在したことがあり、何か所か東京近郊の同店を訪れたことがあるそうだ。

しばらくは、サンマルクカフェで 3 人で世間話をしていた。11 月からは妻もフィリピンに来るのだとか、日本のどこそこに行ったことがあるとか、そんな感じ。しばらくすると、今度は別の女性がやってきた。こちらは明らかに 2 人より若い。20 代だろう。ドリュー・バリモアに顔も体型も似た、可愛い感じだ。ノリも、チャーリーズ・エンジェルの時のドリュー・バリモアに近い。元々 3 人はモールで待ち合わせており、ドリューだけが駐車場に車を置いていて遅くなったそうだ。休日は大体一緒にいるとのこと。一緒に住んでいるらしい。シェアハウス? 年齢差が多少ある気がするが、あまり関係ないのかな。ドリューも近々仕事で日本に行く可能性があるらしく、日本語の教科書を見せてくれた。しかし、仕事では流暢に話すことを求められているらしい。今は全然話せていないから、先は長いだろうなぁ。

そのまま 4 人で話していると、この後どこかお勧めスポットに行って、その後夕食にしましょう、などと彼女たちが言う。待て待て、そんな遅くまで遊び歩いたら、私が BGC まで(安全に)帰れなくなってしまうから駄目だよ、と答える。すると「私が車で送るから平気よ」とドリューが言う。そもそも君らの元々の予定はどうするんだ、と聞けば「プランなんて最初から無いわ。いつも、まず集まって、それから何をするか決めるのよ。で、今決まったわ」と言う。これがフィリピン人のノリなのか、彼女たち固有のものなのか分からない。

f:id:km-in-bgc:20181002000158j:plain

Eastwood Mall のミニ・ハリウッド的な何か

彼女たちの押しに負けて、車で Eastwood Mall まで行く。マカティから 10 km 程、ここも結構大きなショッピングモールのようだ。中庭には、フィリピンの有名人の名前が刻まれた石板があちこちに埋められている。ハリウッドのそれを真似ているらしい。当たり前だが、私が知っている名前は一つもなかった。そこでしばらく時間を潰した後、今度は彼女たちの家に連れていき、夕食を振る舞うと言う。待て待て待て、警戒心ってものがないのか君たちは(私もだが)。まぁ、全員例外なく私よりも体格がいいので、暴力沙汰になったらあっという間に私が負けるだろうが…。

なし崩し的に、彼女たちのシェアハウスへ向かう。Eastwood Mall のすぐそばの庶民的なヴィレッジで、そのエリアの入り口にセキュリティゲートがあった。ゲートの中は見回りなどもされていて、女性にも安全なのだという。また、そこの地主は家族連れに家を貸すのを好まず、働く女性ばかりに家を提供しているらしい。子供は壁に落書きしたり部屋を傷めたりするから嫌なのだという。なるほど、合理的な商売だ。彼女たちの家は 1 階がリビングダイニングで、2 階が 3 部屋。5 人で住んでいるという。そして、一人が料理を準備している間、カラオケ大会が始まった。フィリピン人はカラオケが大好きで、どの家庭もカラオケ機を持っているらしい(厳密には、家主の持ち物だ)。ドリューは、日本人の私のために、宇多田ヒカルの First Love や Automatic を歌う。かなり上手い(何なら宇多田ヒカルよりも上手い)。しかし、歌詞の意味は理解していない。しばらくすると、さらに別のルームメイト 2 人が帰ってきて、カラオケパーティに加わる。歌が上手いのは分かったが(みんな本当に上手い)、謎の訪問者に警戒心ってものはないのか。大雑把な娘たちだ。私と妻とのなれそめを話すと、「どこにそんなラブストーリーが転がっているのか。私もそうなりたい」と口々に言う。みんなシングルのようだ。ドリューの元彼は漁師で、1 年に 1 回しか会えなくて、半年前に別れたらしい。それぞれ魅力のある娘たちに見えるが、フィリピン男子の好みとは合わないのだろうか。みんな結婚して、子供を欲しがっている。フィリピン人は本当に子供が好きだ。

結局、彼女たちが配車した車で BGC まで戻り、この日の冒険は終わった。ちょっとマカティに行くだけのはずが、随分特殊なサブシナリオの分岐を踏んでしまった。今後は自重しよう。